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其の壱 犬鳴
− 福岡県鞍手郡若宮町 −

今年もまた暑い夏がやってくる。
ここ最近のこの暑さに参っている人も少なくないだろう。
そんな諸君の為に心霊探偵でもある私、ジゴ郎がここ福岡より背筋も凍りつく程の世界へ導く手伝いをさせて頂こう。
そして、記念すべき第一幕の世界として私が選んだのが、全国でも有数の心霊スポットであり、福岡県内でもっとも危険と称されるあの犬鳴峠にある犬鳴トンネルである。
この場所で起こる数々の怪奇現象はあとを絶たない・・。
そこで犬鳴トンネル付近で起こる数々の怪奇現象、心霊スポットを検証すべく、私の体験をもとに皆を死の世界へと案内しよう。
2003年×月×日、
私、心霊探偵ジゴ郎、そのアシスタントとしてホワイティ、助っ人としてエキサイト調査部長の3人、さらに今回は記念すべき初回ということでスペシャルゲストととして『探偵ファイル』より東京からキム氏をお招きした。
我々4人は車で、犬鳴トンネル、そして犬鳴村があるという犬鳴峠へと向かった。
午後7時過ぎ、まだ明るい時間に我々は犬鳴峠に着いた。
これが新犬鳴トンネルである。


この新犬鳴トンネルの数十m手前に旧犬鳴トンネルへとつながる道がある。
その道を通り旧トンネルへ向かう途中、白い着物を着た髪の長い女性と思われる姿を見つけた。

私以外はこれについてはなにも感じていないようだが、
これはあきらかに白い着物を着た女性がいるのがわかる。

女性と別れを告げ、我々は旧トンネルへと急いだ。
しかし、旧トンネルまであと数百m程の地点まできた所で、車は一切入れないよう厳重な柵がしてある。

そこで我々は急きょ予定を変更し、先に犬鳴村へと向かった。
車が離合も出来ないほどの細い道を進む。
進めば進むほど、我々の周囲から音が消えていき視界も険しくなっていく。
暗闇の世界で視界がほとんど閉ざされているため、我々がどの方角へ進んでいるのか
どれだけ時がたったのかがわからない。
かなりの緊張が走る・・・。

そして、ついに民家を発見した。

電気が付いている。
普通の民家のようだ。
我々は、ホッと胸を撫で下ろす。

さらにいくつかの民家を過ぎ奥へと進んでみると・・・。

ボロボロの車を見つけた。
ナンバーは外されており、もう動くこともないだろう。
それにしても、我々の乗ってきた車とよく似ている・・・。
いつからここにあるのだろうか?
そんな疑問を抱きながら我々は、さらに奥へと向かった。
数十m程進むと突き当たりにでた。
そこにはもう誰も住んでいない廃屋がある。
見るからに心霊現象が起こりそうな心霊探偵の私でさえ身震いのする様相を呈している。

ここで、私はアシスタントのホワイティとキム氏に記念撮影をしてもらった。

撮影をしていると、廃屋の中から何やら音が聞こえる・・。
「ギシッ、ギシッ」
どうやら2階から聞こえてくる・・。

水の滴や風の音ではない。
その音はしだいに大きくなり、廃屋全体から聞こえる。
1階の奥に白い光が見える。
その光はこちらへだんだん向かってくる・・。
私は目を凝らし、その光を見つめた。
「ただの光か・・。」   嫌、違う。
次の瞬間、私は目を疑った。
光は人の姿に変え、薄気味に悪い笑みを浮かべこっちに向かってくる。
私の背筋に突き刺さる独特の体感・・。
「 危険だ! 」 私しか気づいていないため、必死に3人に訴える。

「 車に戻ろう。 」

我々は車に乗り込み、早々と峠を下った。

細い道を進み旧トンネル前に立ちはだかる通行止めの地点に着いた。
車を降り、旧トンネルへ向かう前に写真撮影。

ここは特に問題なさそうだ。
そして我々が旧トンネルへと向かおうとしたその時、
「ピリリリッ、ピリリリッ」
私の携帯電話が鳴る。
発信通知はなし。
私は驚いたが、電話に出ようとした・・・。
しかし、電話が切れてしまった。
誰かのイタズラか。
電話をポケットにしまい、旧トンネルへ向かおうとする。
「ピリリリッ、ピリリリッ」
再び、電話が鳴る。気持ち悪くなった私は出るなりすぐに電話を切った。
気を取り直して、旧トンネルへ向かう。
電話は鳴らない。
安心した私はそのまま奥へ進んだ。
そして、我々は旧トンネルの入口へとたどり着いた。
私はそのトンネルを見るなり、背筋が凍りついた・・・。

私はトンネルを目視できない。
トンネルの入口付近もだが、中からものすごい嫌な空気が漂ってくる。
他の3人は何も感じないのか、ふさがっている壁を好奇心のまなざしで
触れたり、叩いたりする。

トンネルの入口はブロックの石で通れなくなっており、入るのにも一苦労な為、向かい側から入れるか試みることにした。
車に戻る途中、ガードレールに白い影がぼんやり光っている。
姿は見えない。しかし、何かの気配は感じるのだ。
影は次第に薄くなり、消えていった。
次々と感じる気配に私は平常心を保てぬまま、車へと急いだ。

峠を下り、新犬鳴トンネルを通り反対側の旧トンネルへつながる道へ向かった。
そこは、新トンネルを抜けすぐの所にあった。

ここも車は通れないようだ。我々は車を降り、徒歩で旧トンネルへ向かった。
どのくらい歩いただろうか・・。

旧トンネル入口に着いた。しかし、トンネルの入口は完全に塞がれており、入ることが出来ない。

霧が立ち込め懐中電灯なしでは数cm先も見えない。

ゴミが散乱している。
さらに奥に進んで行く・・・。

反対側の壁が見えてきた。
この時、私のなかで悪寒と嘔吐をがまんするので精一杯であった。

トンネルの壁は落書きでいっぱいだ。
その落書きだらけの壁から常に視線を感じる。
恐ろしいほどの視線から頭痛、めまいと散々な目に会う。

キム氏とエキサイト調査部長はトンネルの奥で撮影をしていた。
彼らは何も感じないのか・・。
私は奥まで行くことも出来ずにその場でたたずんでいた。
撮影も終了し、我々はトンネルの外へ出た。
私が一番に外へ出て、皆が出てくるのを待っていた。
すると、「ピリリリッ、ピリリリッ」
私の電話が鳴り出した。
また発信通知なしの電話である。
私は電話に出た。
「もしもし・・?」
「・・・・・・。」
返事がない。
「もしもし?」
「・・・ぅぅー。」
微かに何かの泣き声のような声が聞こえる。
私は電話を切った。
誰かのイタズラにしてはタイミングが良すぎる。
このことを誰かに伝えようと声を出そうとする。
しかし、背後に気配を感じる。
その気配は段々と近づいてきて私の肩を「トン、トン」と叩いてきた。
私は恐る恐る後ろを振り返ってみた。
誰もいない・・。
やはりここは危険だ!
そう判断した私は皆に事情を告げ、早急に犬鳴峠を出た。
車の中で私の肩から何か臭いがする・・。
何かが腐ったようなそんな臭いだ。
その肩を見ると、泥のようなものがベットリと付いていた。
さっき何かに叩かれた時付いたのかはわからないが、何とも嫌な体験だった。
その泥は何度か洗濯することで何とか落とすことができた。
しかし、よく見ると指の形が黒く残っているのである。
翌日、私はその服を前から欲しがっていた友人に譲った。事情は話してないが、目立たない汚れだから別に良いと言うことだった。
よほど気に入っていたらしい。
数日後、私の携帯が鳴った。
その友人からだ。
用事の会話を済ませ、私は気になっていた服の事を聞いてみた。
その服を着て寝るといつも犬鳴トンネルの前にいて、
毎回同じ男がそこに立っている夢をみるという。
そして、気持ち悪かったからその服は古着屋に持って行ったらしい・・・。

今回のこの話を心霊現象と信じる信じないは諸君の勝手だが、私のこの体験から遊び半分で犬鳴トンネルに行くのは絶対やめたほうがいい。
そして、この私も二度と犬鳴トンネルに行くことはないだろう。


 

 

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